障害者雇用促進法の整備や多様性推進の流れを受け、企業の人事・総務部門でも障害のある方の採用・定着をいかに進めるかが大切なテーマとなっています。その際、「オープン就労」という選択肢に注目が集まっています。本コラムでは、オープン就労の基本と、企業が採用や現場配属で配慮すべきポイント、また障害のある方が活躍できる環境づくりの実際について、法的根拠や国の支援ツールも交えてご紹介します。
オープン就労とは|採用時の基本理解
オープン就労とは、求職者本人が自分の障害や特性を企業に開示したうえで応募・就業する働き方を指します[1][2]。
障害者手帳をお持ちの方の場合は「障害者雇用制度」を活用した求人へ応募し、企業側も採用時点から業務や職場環境への配慮を検討できます。配慮事項や相談事項が面接時点からオープンになるため、双方にとって納得感のあるマッチングが進みます[4]。
採用活動と配慮の具体策|「合理的配慮」の実務ポイント
採用活動の中で、応募書類や面接時に「どのような障害か」「どんな配慮があれば力を発揮できるか」を具体的に聞き取ることが大切です。例えば「疲れやすいので休憩時間の調整が必要」「マニュアルの文字サイズを大きくしてほしい」など、ご本人の状況に応じた配慮内容が想定されます[6]。
厚生労働省が提供する「就労パスポート」は、ご本人の特性・希望・職場配慮のポイントを分かりやすく整理できるツールで、ハローワーク等でも活用が推奨されています[6][7]。
面接時や配属後に「合理的配慮」(障害者雇用促進法に基づく義務)について話し合う際は、応募者本人だけでなく、現場の管理職・同僚への情報共有も大切です。ご本人の合意を得たうえで、どこまで情報共有するかをあらかじめ確認しておきましょう[5]。

配属後・定着のサポート|チームで働く工夫
配属先の現場リーダーや同僚が、障害特性や必要な配慮について理解しやすい環境づくりが定着のポイントです。就労パスポートや本人が作成した資料をもとに「困りごとが起きやすい場面」や「適切な声かけ」「休憩・作業ペース調整」など、具体的な支援策を確認しておくと、職場全体のコミュニケーションも円滑になります[8]。
また、現場の相談窓口やメンター制度など、困りごとが小さいうちに相談できる体制を整えることもおすすめです。オープン就労の方は「困ったときに声をかけて良いのだろうか」と悩みやすいため、受け入れ側から積極的にコミュニケーションの機会を設けることで、離職リスクの低減や長期定着につながります[7]。
就労パスポートの活用|書類保存と活用シーン
就労パスポートは「採用時だけでなく、配属・異動時の情報引き継ぎ」「業務内容変更時の見直し」「産業医や外部支援機関と連携する際」などにも効果的です[9]。本人と定期的に内容を見直しながら、現場と人事部で一元的に管理すると、社内での情報連携やサポート品質の向上につながります。
なお、個人情報の取り扱いには十分注意し、ご本人の同意を得て管理することが大切です[5]。
まとめ|多様な人材の活躍を支えるために
オープン就労の実践は、法令遵守の枠を超え、企業全体のエンゲージメント向上や職場風土の活性化にもつながります。採用・面接から配属・定着まで「本人との対話」「現場との連携」「定期的な振り返りと見直し」を重ねることで、障害者雇用の成功率は着実に高まります[10]。
「違いを認め合い、それぞれの強みを活かす」そんな現場を一緒に作っていきましょう。