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障害者雇用の助成・納付金制度

本稿は、厚生労働省および独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の情報から、2025年時点の障害者雇用に関する助成・納付金制度の要点を実務者向けに整理したものです。
はじめに
厚生労働省「令和6年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業の雇用障害者数は677,461.5人、実雇用率は2.41%と、ともに過去最高を更新しました1。一方で、法定雇用率は段階的に引き上げられており、2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%となる計画です2。また、週10〜20時間の特定短時間労働者(重度身体・重度知的・精神)は雇用率上0.5人として算入可能となり、多様な働き方の活用余地が広がっています2。
厚生労働省の主要助成金(採用・定着フェーズ)
ここでは、採用初期の負担軽減とミスマッチ防止に直結する代表的助成(発達・難病コース/トライアル)について、支給水準・適用条件・実務上の留意点を一次情報に沿って整理します。
特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
発達障害者・難病患者の雇入れ時に活用できる助成です。短時間労働者の区分や分割支給の扱いを含め、対象・額・申請要件を把握しておくと設計がスムーズになります。
ハローワーク等の紹介により発達障害者または難病患者を継続雇用労働者として雇い入れた事業主に支給。
支給額(代表):中小企業120万円/2年間(30万円×4期)、大企業50万円/1年間(25万円×2期)。短時間労働者(週20〜30時間)は中小企業80万円/2年間(20万円×4期)、大企業30万円/1年間(15万円×2期)5。
トライアル雇用助成金(障害者コース)
試行雇用で評価機会を確保し、定着見込みを見極める制度です。支給額・期間は対象により異なるため、導入設計段階での条件整理が重要です。
試行雇用によりミスマッチを低減する制度。
支給額(代表):精神障害者は月8万円×3か月+月4万円×3か月(最長6か月)、それ以外は月4万円(最長3か月)6。
制度名 | 主管 | 主な対象 | 支給額(代表例) | 期間 | 根拠 |
---|---|---|---|---|---|
特定求職者雇用開発助成金(発達・難病コース) | 厚生労働省 | 発達障害者・難病患者 | 中小120万円/大50万円、短時間:中小80万円/大30万円 | 1〜2年(分割支給) | 5 |
トライアル雇用(障害者トライアル) | 厚生労働省 | 障害者(要件該当) | 精神:8万円→4万円/他:4万円 | 最長3〜6か月 | 6 |

JEED:障害者雇用納付金制度と専門助成
納付金制度(申告・徴収)と、その財源を活用した調整金・報奨金、ならびに環境整備に資する専門助成の要点を整理します。
納付金・調整金・報奨金のポイント
納付金:常用雇用労働者100人超で法定雇用率未達の場合、不足1人につき月5万円を納付(申告期間:原則4/1〜5/15)3。
支給調整:多数雇用企業への集中支給を是正するため、調整金は年総計120人月超の超過分が月2.3万円、報奨金は年総計420人月超の超過分が月1.6万円に調整(2024年度改正)4。申請期限は概ね4/1〜7/31(報奨金等)3。
専門助成の活用例
制度名 | 主な目的・対象 | 助成率・上限(代表例) | 期間/主な要件 | 根拠 |
---|---|---|---|---|
障害者作業施設設置等助成金 | 作業環境改善の設備整備等 | 費用の2/3/ 作業施設のみの申請は1人当たり月13万円または6万5千円(代表例) |
区分・対象経費により上限が異なる/ 認定→実施→請求の順 |
7 |
重度障害者等通勤対策助成金(住宅の賃借) | 通勤困難の解消(住居の確保) | 助成率3/4/ 世帯月10万円・単身月6万円上限 |
最長10年/ 認定→実施→請求 |
8 |
重度障害者等通勤対策助成金(駐車場の賃借) | 自動車通勤に必要な駐車場 | 助成率3/4/ 月5万円上限 |
最長10年/ 認定→実施→請求 |
9 |
職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金 | 訪問型・企業在籍型による定着支援 | 支給単価・上限は制度様式に準拠 | 支援計画に基づき実施/ 認定→実施→請求 |
JEED公表資料 |
- 措置実施前に「受給資格等認定申請」を提出(都道府県支部の所管窓口)。
- 認定通知受理後に措置を実施(契約・支出等)。
- 実績に基づき「支給請求」を行う(必要書類は制度別様式を確認)。
2025年の制度動向と実務チェックポイント
ここでは、法定雇用率の引上げ、除外率の引下げ、短時間算入の導入が実務に与える影響を、準備・運用の観点で簡潔に整理します。
法定雇用率・除外率・特定短時間労働者
採用計画・配置設計・人件費計画に直結する変更点です。自社の算定基礎と計画年次に落とし込みましょう。
- 法定雇用率の段階的引上げ:2024年4月に2.5%、2026年7月に2.7%2。
- 特定短時間労働者の算入:週10〜20時間の重度身体・重度知的・精神は0.5人算入2。
- 除外率制度の見直し:2025年4月から一律10ポイント引下げ(業種横断)2。
まとめ
今回は、制度の要点と、社内の期限管理と計画立案に直結する観点で整理しました。
2025年は、法定雇用率の引上げ、除外率の引下げ、短時間算入の明確化、納付金制度の支給調整など、制度面の更新が重なります。
厚労省系(採用・定着)とJEED系(環境整備・納付金)の二層構造を踏まえ、助成要件・上限・申請期限を“自社の雇用計画”に織り込むことが要諦です。
本稿のリンク先(一次情報)をベースに、最新様式・支給要領の確認と、社内の期限管理体制の整備を進めてください。
障害者雇用率の算定表(手計算ガイド)
以下の表に自社の数値を記入し、式に従って雇用率と不足人数を算定してください。
項目 | 記入欄(自社数値) | 計算式 | 備考 |
---|---|---|---|
常用雇用労働者数(A) | ___ 人 | - | 算定基礎の対象従業員 |
障害者数(B) | ___ 人 | - | カウントは1人=1人 |
特定短時間労働者(C) | ___ 人 | 0.5 × C | 週10〜20hの重度・精神 |
障害者換算人数 | ___ 人 | B + (C×0.5) | |
雇用率(%) | ___ % | (障害者換算人数 ÷ A)×100 | 端数第3位以下切捨て |
不足人数(2.5%基準) | ___ 人 | (0.025×A) − [B+0.5×C] | 2024年4月〜 |
不足人数(2.7%基準) | ___ 人 | (0.027×A) − [B+0.5×C] | 2026年7月〜 |
納付金(月額目安) | ___ 円 | 不足人数 × 50,000円 | 100人超企業対象 |
注釈
- 令和6年障害者雇用状況の集計結果(厚生労働省、2024年12月20日)
- 障害者雇用率の設定・特定短時間労働者の算入・除外率見直し(厚生労働省 資料)
- 障害者雇用納付金制度(JEED)Q&A・申告/申請の時期等
- 働く広場 2025年4月号:納付金制度改正の概要(JEED)
- 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難病コース)(厚生労働省)
- 障害者トライアルコース/短時間トライアル(厚生労働省)
- 障害者作業施設設置等助成金 チェックリスト(JEED)
- 重度障害者等通勤対策助成金(住宅の賃借)ご案内(JEED)
- 重度障害者等通勤対策助成金(駐車場の賃借)ご案内(JEED)
- 福祉・介護:障害者の就労支援対策(厚生労働省)
- 就労選択支援 実施マニュアル(厚生労働省、2025年)
- 就労選択支援について(厚生労働省:制度概要・B型との関係)