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人事担当者・決裁者のための「障害の捉え方」

 

多様性を力に変える現代の障害者雇用

はじめに

多様性やインクルージョン推進が求められる現代の企業経営において、障害者雇用のあり方は大切なテーマのひとつです。厚生労働省が定める障害者雇用促進法やSDGsの観点からも、企業が持続的に成長していくためには、多様な人材が活躍できる環境づくりが欠かせません[1][2]。

しかし、その出発点となる「障害」の捉え方について、現場ではいまだに誤解や固定観念が残っているのが実情です。人事担当者・決裁者としては、「障害とは何か」「どのように向き合うべきか」をきちんと整理し、自社の採用・定着施策に反映させていくことが求められます。

本コラムでは、障害をめぐる考え方の変遷と、企業人事がどのように障害者雇用を進めるべきかについて考察します。


障害の捉え方の変遷|社会が変われば働き方も変わる

障害をどう捉えるかは、時代とともに大きく変化してきました。この変化を理解することで、現代の障害者雇用で何が求められているかが見えてきます。

従来の考え方:個人に焦点を当てる視点(医学モデル)

従来は、障害を個人の身体や機能の問題として捉える「医学モデル」という考え方が主流でした。
この視点では、「働くためには個人が適応する必要がある」「治療や訓練によって改善を目指す」といったアプローチが中心となっていました。

人事の現場では、「この方はどこまで業務に対応できるか」「どのような医療的サポートが必要か」といった個人ベースの検討がなされやすいのが特徴でした。

現代の考え方:環境や社会に目を向ける視点(社会モデル)

1980年代以降、障害当事者の運動や国際的な潮流を背景に、「社会モデル」という新しい考え方が広がりました[3][4][5]。
この視点では、障害を「社会的なバリアや環境の不備」が生み出しているものと捉えます。

例えば、車椅子を利用している方が自由に移動できないのは「段差」や「エレベーターがない」といった物理的な環境が原因、視覚や聴覚に障害のある方が情報にアクセスしづらいのは「点字案内がない」「手話通訳が不足している」といった社会側の配慮不足が主因である、という発想です。

この考え方では、「障害のある方本人を変える」のではなく、「社会や組織・環境を変える」ことが重視されます。
つまり、職場のバリアフリー化や情報保障、制度設計の工夫など、企業が積極的に環境整備に取り組むべきだというメッセージでもあります。


現場実践のポイント|環境を整えることから始める

昨今は「社会モデル」の重要性が増しており、企業としても“合理的配慮”のもと、環境改善に取り組むことが強く求められています[6]。
しかしながら、「社会モデル」一辺倒の議論にも落とし穴があることに注意が必要です。

実際の職場で障害者雇用を進める際のポイントを整理してみましょう。環境改善を軸とした取り組みが成功の鍵となります。

社会環境の改善が第一歩

現在は「合理的配慮」のもと、企業が環境改善に取り組むことが法的に義務づけられています[6]。これは、障害のある方が能力を発揮できるよう、社会や職場の仕組みを変えていくアプローチです。

個別のサポートも併せて考える

ただし、環境整備だけですべてが解決するわけではありません。持病をお持ちの方や、体調の変化がある方の場合には、医療現場との連携や業務配分の個別調整も大切になります。例えば、医師の意見をもとに就業時間を調整したり、在宅勤務を柔軟に活用したりすることで、その方の健康を守りながら力を発揮していただける体制を構築できます[7][8]。

環境づくりと個別配慮の両面から

企業の障害者雇用では、環境改善を基本としながら、個別のニーズにも応える柔軟性を持つことが、障害のある方の採用・戦力化・職場定着につながります。


具体的な事例で考える“障害の捉え直し”

厚生労働省の「精神障害者とともに働く」事例集から、実際の企業での成功事例をご紹介します。
どの事例も、環境や制度を変えることで成果を上げている点が共通しています。[9]

事例1:柔軟な勤務制度と相談体制の構築

ある企業では、精神障害のある方の採用にあたり、短時間勤務制度を導入し、いつでも相談できる体制を整備しました。体調の変化に応じて勤務時間を調整でき、困ったときにすぐに相談できる環境を作ることで、安定した就労を実現しています。制度の柔軟性と心理的安全性の確保が成功の要因です。

事例2:個人の強みを活かせる業務設計

ITスキルの高い精神障害のある方を採用した企業では、そのスキルを十分に発揮できる業務を設計しました。従来の画一的な業務配分ではなく、個人の強みや特性に合わせた業務の切り出しを行うことで、戦力として活躍していただけています。環境を個人に合わせることで能力を最大限引き出した事例です。

事例3:体調変化への早期対応システム

精神障害のある方の体調変化にいち早く気づけるよう、SOSサインをキャッチできる仕組みを職場に導入している企業があります。十分な実習期間と、きめ細かな面接による適切なマッチングを組み合わせることで、「何でも話せる関係性」を築き、大きな安心感につなげています。予防的なサポート体制が定着の鍵となっています。


採用・人事担当者が意識すべきポイント

障害者雇用を推進するうえで人事担当者や決裁者が意識しておきたいポイントをまとめました。日々の実務で活かせる視点です。

(1) 自社の現状把握と課題認識

まず、自社のオフィスや業務プロセス、採用フローなどがどこまでバリアフリー化・合理的配慮に対応できているかを棚卸ししましょう。
「物理的なバリア」「情報面でのバリア」「制度・運用面でのバリア」など、多面的に課題を洗い出すことが大切です[1][9]

(2) 多様な視点の導入

障害のある方ご本人や専門家の意見を取り入れ、環境改善と個別配慮の両方から施策を検討すること。単なる「制度対応」や「数合わせ」にならないよう、現場でのリアルな声をもとに改善を進めることが、持続的な職場づくりにつながります[8][9]。

(3) 小さな改善から継続的な改革へ

すべてを一気に変えるのは現実的ではありません。まずは身近なバリアの解消や、制度・運用の柔軟化など"小さな一歩"からスタートし、段階的な改善を目指すことが大切です[9]。


まとめ|環境を変えることで企業も成長する

障害者雇用は、企業にとって単なる「義務」でも「CSR」でもありません。多様な人材が活躍できる職場をつくることは、イノベーションや組織力向上、そして企業ブランドの向上にも直結します。

障害を個人の問題ではなく、環境や社会の課題として捉え直すことで、すべての人にとって働きやすい職場づくりが可能になります。

ぜひ、自社の障害者雇用や職場づくりの現状を今一度見直し、次の一歩に役立てていただければ幸いです。


【注釈・出典】

1.厚生労働省「障害者雇用促進法」
2.内閣府「障害者白書」
3.世界保健機関(WHO)「ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)」
4.障害者差別解消法(平成25年法律第65号)
5.Oliver, M. (1990). The Politics of Disablement. Macmillan Education UK.
6.外務省「障害者の権利に関する条約」
7.厚生労働省「障害者雇用対策」
8.厚生労働省「合理的配慮指針事例集」
9.厚生労働省「好事例集」
10.内閣府「障害者差別解消法に関するQ&A」

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